宮沢賢治の名は「雨にも負けず」のフレーズでお馴染みですが「イーハトーブ」や「銀河鉄道の夜」など耳学問で終わったまま、なかなかそれ以上に進む機会もなかった。初めて記念館を訪ねてこれまで親しみ感が乏しかった理由が分かってきました。展示室内は人間・賢治ワールドの空気一色しか流れておらず、見学している我々の呼吸さえ邪魔なほどに感じる静謐さがありました。「科学」「芸術」「宇宙」「宗教」「農学」の分野に渡り、深遠で気高い思想や世界観をもって多くの功績を残していた事実が室内中に溢れかえっています。たまたま詩人、童話作家、農学の指導者など職業が代表的に書かれていますが分野を分かつことなく活躍した天才だった。同時期に彼の世界観に迫れる識者が不在だったのではないかと想像してしまう。私たちの理解力では親しみ感まで到底、到達出来得ない天才クリエイターでありアーティストだったと。